
国立西洋美術館「カラヴァッジョ」展に行ってきました。
企画展もいいけど、国立西洋美術館の常設は展示作品だけでなく、コルビュジエ建築そのものを楽しめるのでこちらもオススメ。
「カラヴァッジョ」展
国立西洋美術館
「カラヴァッジョ」展 会期:2016年3月1日(火)~6月12日(日)
時間:9:30~17:30(金曜日は20:00まで)
※最終入館は閉館の30分前まで
世界初公開である「法悦のマグダラのマリア」が目玉。「バッカス」、「果物籠を持つ少年」、「メデゥーサ」などの有名どころも揃っています。
カラヴァッジョの画風を理解しやすい
風俗画、静物、肖像、光、聖母と成人の新たな図像、エッケホモという流れで展示してあります。風俗画は、占い、酒場、音楽、五感と細かく分かれていて、順をたどるとカラヴァッジョの特徴がわかりやすいです。

「トカゲに噛まれる少年」や「メデューサ」は、視覚だけでなく五感に訴える作品でした。痛みが走る様子に共感できたり、メデューサの叫び声が聞こえるような気がしました。

「バッカス」最高

世界初公開の「法悦のマグダラのマリア」もよかったけど、やっぱりベタに「バッカス」が最高でした。間近で観るとぜんぜん違うのね、画集とは訳が違う(当たり前)。
18歳のときにウフィッツィ美術館に行って「バッカス」を観ましたが、さすがに21年前じゃ記憶も曖昧。改めて観ると繊細さと妖艶さに引きつけられます。グラスに注がれたワインの震えは、まるで本当に目の前に差し出されているような緊張感があります。
カラヴァッジョという人物を理解しやすい
絵画だけでなく、カラヴァッジョの人柄を知るたすけとなる史料も展示されていました。ローマ国立古文書館からきた裁判書類などです。
証人がカラヴァッジョの風貌を語っていたり、居酒屋のオヤジや家主がカラヴァッジョのしたことを証言しています。炒めたアーティチョークなのか、揚げたアーティチョークなのかで居酒屋のオヤジに皿を投げつけた事件などすさまじい短気さが垣間見えます。
最後は殺人をして逃亡した画家カラヴァッジョ、こわいな…というよりもカッコいいなあと思ってしまいます。
カラヴァジェスキたち

ラ・トゥール「煙草を吸う男」
カラヴァッジョの作品だけでなくカラヴァジェスキとよばれるカラヴァッジョの画法を模倣し継承した画家たちの展示も豊富です。ベルニーニ、グルエチーノ、ラ・トゥールも含まれていました。ベルニーニは「教皇ウルバヌス8世の肖像」、「手紙に封をする聖ヒエロニムス」。

グエルチーノは「ゴリアテの首を持つダヴィデ」。
対抗宗教改革
当時はルターやカルヴァンによる宗教改革がおこり、プロテスタント運動が盛んでした。一方、カトリック教会は自己改革を行い、教皇を至上とする教会組織を建て直していました。イエズス会による海外布教も積極的に行われました。
そのような背景を受けて、宗教画も当時の風俗を具体的に表し、イエスや聖人たちに親近感を抱かせ、信心を深くするような絵画がひろく描かれるようになりました。カラヴァッジョやカラヴァジェスキたちが人間味を追求した背景を知ると、絵画もまた史料であり、面白味が増します。
タンツィオ・ダ・ヴァラッロ「長崎におけるフランシスコ会福者たちの殉教」という作品も展示されています。この1作品のおかげで、カラヴァッジョたちの宗教画とその背景は、日本にも関係しているんだと実感できます。今年は高山右近も列福されてるしね。
これもまた
ボッティチェリ展のように、閉館30分前に最初の展示室に戻ってもう一度鑑賞するのがおすすめです。静かに作品を観ることができました。
- 関連記事
-